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2019年10月19日(土)

林晶彦さんのコンサートに寄せて

                 ヴァイオリニスト 梓澤たまき

 

私は何のために、 こうしてここに生まれ、 音楽をやっているのか。 時々、考えることがある。 そんな時に、私に目指す方向を教えてくれた一つの出来事を書いてみようと思う。

 

数年前、何の気なくテレビを見ていた。画面は、新潟長岡の有名な花火大会を写していた。 アナウンスが入った。 「長岡空襲で亡くなられた方々のために、慰霊の花火を打ち上げます」 長岡空襲とは、1945年8月1日の夜、新潟県長岡市の市街地を標的に焼夷弾が投下され、1480余名に及ぶ一般市民が亡くなられた、空襲である。 この花火のために作曲された慰霊の音楽が流れる中、ひとつ、ひとつ、花火が打ち上げられていった。 すうっと一筋の光が空へ上り、空中でパッと開いた瞬間、白金の光の粒たちがキラキラと舞い降りる。 その花火を見ているうちに、なにか不思議な感覚が降りてきた。 誰かが必死に訴えているような、まさしくそれは空襲で亡くなられた方々が花火の光になり、メッセージを送ってくれているような、そんな感覚だった。 花火の光たちは、語りかけてきた。 「私たちの想いを伝えてください。 私たちは、無念の死を遂げました。 私たち人間は、争いをするために生まれてきたのではありません。 私たちの本来の姿は、 この花火の輝きのように ひとり、ひとりが眩く美しく輝く 光です。 私たちの本来の姿を 思い出すように みんなに伝えてください。」 私の頭の中の勝手な想像が、このような台詞を脳内で作り出したのかもしれない。 そうだとしても、私にははっきりと、こう聞こえたのだ。 花火の光が教えてくれたことは、私の生きる問いへのギフトだったと思う。 私がこの命を生きていることは、自分ひとりが決めたことじゃないんだ。 志を半ばにして、この世を去らなければいけなかった人たちの、果たせなかった願いや希望を、私の想いと一緒に花開かせること。 そして、私の命が今、感じている喜びや祈りも、また次の新しい命へ渡していくこと。 誰もが、ひとりひとりが輝く光なのだということを みんなが思い出せる時代が来るように… それが、ここに生きる役割なのだと、 そう教えてくれたのだ。

 

今回、作曲家林晶彦さんのデビュー30周年という、大変貴重なコンサートにお声をおかけいただいた。 林さんも、はるか昔に生きていた、どこかの国の誰かから、はたまた宇宙の彼方の星から、大切なメッセージをたくさん託され、この時代のここに生まれて来て下さったに違いない。林さんのピアノの音色や、音楽を拝聴するたびに、そう思う。 今は、林さんの繊細な筆跡で記された、ビーズが散りばめられたような美しい音符たちを見つめ、音と語り合う練習の日々を過ごしている。

デビュー30TH記念コンサート『林晶彦の世界~永遠への飛翔~』
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Photo by Kotaro Suzuki